投資原則

投資選定

1  腹落ちできるほど理解しているか(理解の枠外ならば手を出してはいけない)

2  成長ストーリーがあるか

  • 成長市場:市場の拡大に応じた成長ストーリーがあり、それを裏付ける競争優位があるか。成長市場であってもニッチ過ぎないか、競合と共に成長できるほど市場規模が大きいか。
  • 成熟市場:じわじわとシェアを拡大していく成長ストーリーがあり、既存の競合が対抗できない競争優位あるか。
  • 想定するストーリーは、数字を伴っているか(数字を伴わないストーリーはおとぎ話であり、ストーリーの裏付けのない数字は財務モデルの練習に過ぎない。ストーリーと数字の架け橋となるものがバリュエーションである)
  • 本質的な成長ストーリーは「How?How?How?」と仮説を追求した先に現れる
  • 過去からの延長ではなく、未来の視点で成長ストーリーを考える。
  • 一次的な影響だけでなく、時間の経過を踏まえて二次的、三次的な影響まで考える。

3  ポジショニングは良いか

  • 競争が熾烈でないか、競合を圧倒しているか(投資対象先だけでなく競合の調査も忘れない)
  • 顧客や仕入先などの首根っこをつかまえているか、もしくはつかまれてないか
  • 参入障壁が高いか(免許や規制の存在、資本集約型ビジネスなど。参入障壁が低い場合、脅威となる新規参入者が突然現れる可能性がある)
  • 代替品が存在するか。それは脅威となるか。

4  競争優位があるか

  • 価格優位性あるか(ブランド、独自性、高品質等。コモディティは価格競争に陥る)
  • 価格形成力あるか(業界リーダー、独占企業、代替の効かない商品サービス等)
  • 第一想起されるか(「~といえば~」と顧客に真っ先に思い出してもらえるか。売上に直結する)
  • 再現性があるか(次のヒット商品やサービスの開発、次の幹部人材や管理職の育成、次の企業買収の成功など)
  • 独自のリソースあるか(地理的優位性、希少な原材料やネットワークへのアクセス等)
  • 競合が模倣するのを躊躇する非合理的な部分があるか。その非合理的な部分が全体の合理的なストーリーを形成しているか(高品質なのに低価格、フランチャイズではなく直営店、適正在庫ではなく過剰在庫、高利益率ではなく低利益率の事業に注力など)
  • 模倣が困難か(模倣できないものが真の差別化である。模倣できるものは単に良し悪しに過ぎない。技術優位性は新規開発の再現性が確立されていない限りいつか追いつかれて模倣される)
  • 革新的な事業運営方法か(地道な積み重ねが必要で一朝一夕には構築できない)
  • 規模の経済(リアルビジネスの場合はあくまで地域レベルでのシェア拡大)と顧客囲い込み(会員制度や顧客ロイヤルティの高さなど)が両立してるか(顧客の囲い込みが出来てないのに規模を拡大しても意味がない)
  • 拡張性のある製品又はプロセスによるコスト優位性があるか(わずかな費用で追加生産可能)
  • 粗利率が向上していく規模の収益逓増効果があるか(規模の経済と顧客の囲い込みの両立に拡張性を加えた「ネットワーク経済性」。超過利潤が大きく新規参入の脅威が大きいためシェアファーストが重要.。)
  • 優れた企業文化か。優れた企業文化は、競争優位を生み出す土壌となり、それ自体が強力な競争優位である。創業者の亡き後も生き続けていく。最も模倣が困難なのが企業文化である。
  • 本質的な競争優位は「Why?Why?Why?」と原因を追究した先に現れる

5  競争優位を持続可能か

  • 広い視野と長期的視点から競争優位を持続できるか検討したか(大局観)
  • 競争優位を持続できる経営戦略、組織体制、リソース等があるか(内的要因)
  • 製品やサービスのライフサイクルの長さ、陳腐化、パラダイムシフト、ブレイクスルーをもたらす競合登場の可能性があるか(外的要因)
  • 模倣や新規参入により競争優位を持続できず、現在の収益性(利益率や資本利回り)や成長率を将来において維持できない企業は多い。投資すべきは、競争優位を持続もしくは再構築して現在の収益性や成長率を将来において維持もしくは高める企業である。競争優位を持続できるかどうかが将来を決定付ける。
  • どんなに強い競争優位を有していても、それを持続できないと意味がない。「持続可能か」という問いはとりわけ重要な考えである

6  レバレッジの効果だけでなく、高い利益率もしくは高い資産回転率に起因した高いROEか(一時的に業績が悪化している場合を除く)。過去から高いROEを保ち続けている企業はその後も維持する可能性が高い(逆もしかり)。

7  エコノミック・プロフィット(ROIC×投下資産)が拡大しているか。

  • 高いROICの場合、ROICを犠牲にしてでも投資を優先して事業拡大をしているか(大事なのは経済的付加価値の拡大である)
  • 低いROICの場合、売上拡大よりも先に低いROICの改善をしているか。ROICを改善できる競争優位があるか(投資よりも先にROICを改善した方が効率良く経済的付加価値を拡大できる)

8  直近の買収について検討したか

  • 買収プレミアムが高くないか(失敗する可能性が高い)
  • M&Aの実績は豊富か(成功する再現性が高い)
  • ビジネスモデルを強化するロールアップ型の買収か(成功する可能性が高い)
  • 買い手の規模の1/3を超える大型買収ではないか(失敗する可能性が高い)

9 現在の好業績は一時的な需要に起因していないか。今後も継続するか。短期の好業績に惑わされず、長期で勝てるかを考える。

10 カリスマ経営者に依存していないか。誰が社長になっても問題ないぐらいの成長ストーリー、ポジショニングの良さ、競争優位、企業文化があるか。企業のライフサイクル後半になるほど経営者の資質の重要性は低下していき、企業文化の重要性が増していく。

11 配当や自社株買いといった株主還元は大事だが、それだけに長けていないか。

12 公表情報だけでなく、生の情報を調べたか(現地に足を運ぶ、関係者のフィードバックを受ける、商品やサービスを実際に使ってみる、そして一消費者としてどう感じたか)

13 世の中に必要とされているか、無くなると困る消費者が多いか、実際に自分がよく利用しているか(自分がお金を払ってもいいと思う商品やサービスほど素晴らしいものはない)

14 インフレ時に顧客又は仕入先に価格転嫁できるか、顧客が消費を抑制したり代替品を求めないか(価格転嫁の限界)、それともインフレの影響は受けないか

投資姿勢

15 お金が余ってると不要な投資をしてしまうが、それは大間違い。何もせず大きなチャンスをじっと待つ。

16 潜在意識からアイデアが湧いてきても即座に反応してはいけない。しばらく時間を置いて論理的な頭でチェックする必要がある。潜在意識は害にもなるし、役立つこともある。

17 有名投資家の投資行動を分析することは有益である。しかし、その行動を自分が理解できないならば後追いすべきではないし、有名投資家でもミスをすることに留意すべき。

18 マクロ予測(為替、金利、インフレ率、商品市況、政治状況、景気など)、相場予測(マーケットタイミング)、他者の行動予測は不可能である。しかし、自分が当事者である消費者行動は予測可能であるため投資判断に反映させる。

19 本質的でない要因を気にして投資を見送るとチャンスを見逃す。考慮すべきは本質的な要因のみであり、重要でない要因、重要だが本質的でない要因に影響されて投資判断を下すべきではない。前者の情報は少なく、後者の情報はありふれている。多くのことを知っているよりも、わずかな大事なことを知っている方が重要である。

20 優良企業にベストタイミングで投資できるのは一時的な業績悪化(今後も続く場合は対象外。業績好転はめったに転がっていない)、改善可能な不祥事の発生(組織に染み付いた文化的なものは対象外)、金融危機などで株価が暴落した時ぐらい。その際は、その後の株価変動を恐れるのではなく、投資したい金額まで買い集められないことを恐れるべき。勇気(狂気)が試される。

21 株価チャート(バリュートラップ)や過去の投資時点の株価(アンカリング)にとらわれてはいけない。シンプルに現在の株価が適正価格以下になった時に投資する(DCFによるバリュエーションで事前に価値を算定しておく。決して価値を算定する前に投資してはいけない。とはいえ、正確な価値算定は不可能なのでその価値にも囚われ過ぎてはいけない)

22 新たな候補先は既存の投資先以上に魅力的か。良い企業はたくさんあるが、投資すべき企業はほとんど無い。投資検討の大半は候補先を落としていく作業である。そして、候補先に愛着を持ってはならない。投資は状況に応じて機会費用重視で行う。

23 買わない理由を考えたか。ネガティブ情報を積極的に探したか。決めつけや先入観は無いか。自分の仮説は必ずしも正しいわけではないという謙虚さを持ち、定期的に自分の仮説を検証する(反証)。自分の投資検討先を素晴らしいと思い込んでしまうバイアスを認識する。自分を欺いてはならない。

24 優れた投資アプローチであってもすぐに結果が現れないことがある。その時にアプローチを変えるのは間違い。反対に上手くいった際に惚れこみ過ぎることも間違い

25 リスクの高い株式投資では数倍・数十倍・それ以上のリターンを目指すべきであり、数パーセント・数十パーセントの損益は誤差である。多少の含み益で売却すべきではないし、多少の含み損があっても気に病む必要はない。

26 「じっと座って待ち続ける」ことが巨額の利益に繋がる(これが投資において最も難しい)。長期に渡る株価変動の波に耐えるには、投資先について十分な知識と確信を持ち、理論上の株価を算定しておく必要がある。そして、良い投資は株価やニュースが気にならない退屈なものとなる。悪い投資は株価やニュースが気になって寝ている間に歯を食いしばることになる(それは深層心理でそのポジションが間違っていることを暗に示している)。ぐっすり眠れるポートフォリオの構築を目指すべき。

27 投資時点の想定が間違っていたと判明した場合又は状況の変化とともに想定が現実と乖離してきた場合は売却する(すぐにではなく機を見て少しでも高い値段で)。株価の天井で売却することは不可能なので、売却後に株価が上がったとしても、もはや結果論に過ぎず、気にしてはいけない。

28 知りようもない未来に結果を左右される投資活動に失敗はつきものであり、自分の失敗を認める必要がある。失敗を振り返って自分の教訓とする。

29 たかが金である。儲かろうが損しようが、お金に執着してはいけない。深呼吸をして脱力し、冷静な頭と澄んだ心で投資に向き合う。

30 投資で最も大事なことは、投資原則に従うことである。思想がなければ大きく勝てない。

2026年1月19日 最終更新