投資選定
1 腹落ちできるほど理解しているか。理解の枠外ならば手を出さない忍耐が必要。
2 10年後に成長した姿をイメージできるストーリーがあるか
- 成長市場:市場の拡大に応じて成長していくストーリーがあるか(競合と共に成長できるほど市場規模が大きいか。市場がニッチ過ぎないか)
- 成熟市場:じわじわとシェアを拡大して成長していくストーリーがあるか(小規模プレーヤーが退場しているか。既存の競合が対抗できない競争優位あるか)
- 想定するストーリーは、可能性があるのか、もっともらしいのか、確からしいのか、どの段階にあるのか。
- 想定するストーリーは、数字を伴っているか
- 本質的な成長ストーリーは「How?How?How?」と仮説を追求した先に現れる
3 ポジショニングは良いか
- 競争が熾烈でないか、競合を圧倒しているか(投資対象先だけでなく競合の調査も忘れない)
- 顧客や仕入先などの首根っこをつかまえているか、もしくはつかまれてないか
- 商品市況などコントロールできないものに強く左右されてないか
- 参入障壁が高いか(免許や規制の存在、資本集約型ビジネスなど。参入障壁が低い場合、脅威となる新規参入者が突然現れる可能性がある)
- 代替品が存在するか。それは脅威となるか。
4 競争優位があるか
- ブランド、独自性、高品質による価格優位性あるか(コモディティに起因した価格競争に陥らないか)
- 価格形成力あるか(業界リーダー、独占企業、代替の効かない商品サービス等)
- 第一想起されるか(「~といえば~」と顧客に真っ先に思い出してもらえるか。売上に直結する)
- 独自のリソースあるか(地理的優位性、希少な原材料やネットワークへのアクセス等)
- 競合が模倣するのを躊躇する非合理的な部分があるか。その非合理的な部分が全体の合理的なストーリーを形成しているか(高品質なのに低価格、フランチャイズではなく直営店、適正在庫ではなく過剰在庫、高利益率ではなく低利益率の事業に注力など)
- 革新的な事業運営方法か(地道な積み重ねが必要で一朝一夕には構築できない)
- 規模の経済(リアルビジネスの場合はあくまで地域レベルでのシェア拡大)と顧客囲い込み(会員制度や顧客ロイヤルティの高さなど)が両立してるか(顧客の囲い込みが出来てないのに規模を拡大しても意味がない)
- 拡張性のある製品又はプロセスによるコスト優位性あるか(わずかな費用で追加生産可能)
- 粗利率が向上していく規模の収益逓増効果があるか(規模の経済と顧客の囲い込みの両立に拡張性を加えた「ネットワーク経済性」。超過利潤が大きく新規参入の脅威が大きいためシェアファーストが重要)
- 優れた企業文化か。優れた企業文化は、競争優位を生み出す土壌となり、それ自体が強力な競争優位である。創業者の亡き後も生き続けていく。
- 模倣が困難か(技術優位性はいつか追いつかれて模倣される。最も模倣が困難なのが企業文化である)
- 本質的な競争優位は「Why?Why?Why?」と原因を追究した先に現れる
5 競争優位を持続可能か
- 広い視野と長期的視点から競争優位を持続できるか検討したか(大局観)
- 競争優位を持続できる経営戦略、組織体制、リソース等があるか(内的要因)
- 製品やサービスのライフサイクルの長さ、陳腐化、パラダイムシフト、ブレイクスルーをもたらす競合登場の可能性があるか(外的要因)
6 レバレッジの効果だけでなく、高い利益率もしくは高い資産回転率に起因した高いROEか(もしくはこれから向上しそうか)
7 エコノミック・プロフィット(ROIC×投下資産)が拡大しているか(もしくはこれから向上しそうか)
- 高いROICの場合、ROICを犠牲にしてでも売上拡大をしているか(大事なのは経済的付加価値の拡大)
- 低いROICの場合、売上拡大よりも低いROICの改善をしているか(まずそこを改善した方が効率が良い)
8 直近の買収について検討したか
- 買収プレミアムが高くないか(失敗する可能性が高い)
- M&Aの実績は豊富か(成功する再現性が高い)
- ビジネスモデルを強化するロールアップ型の買収か(成功する可能性が高い)
- 買い手の規模の1/3を超える大型買収ではないか(失敗する可能性が高い)
9 現在の好業績は一時的な需要に起因していないか。今後も継続するか
10 カリスマ経営者に依存していないか。誰が社長になっても問題ないぐらいの成長ストーリー、ポジショニングの良さ、競争優位、企業文化があるか。企業のライフサイクル後半になるほど経営者の資質の重要性は低下していき、企業文化の重要性が増していく。
11 配当や自社株買いといった株主還元は大事だが、それだけに長けていないか(重要なのはそれ以外)
12 公表情報だけでなく、生の情報を調べたか(現地に足を運ぶ、関係者のフィードバックを受ける、商品やサービスを実際に使ってみる、そして一消費者としてどう感じたか)
13 世の中に必要とされているか、無くなると困る消費者が多いか、実際に自分がよく利用しているか(自分がお金を払ってもいいと思う商品やサービスほど素晴らしいものはない)
14 インフレ時に顧客又は仕入先に価格転嫁できるか、顧客が消費を抑制したり代替品を求めないか(価格転嫁の限界)、それともインフレの影響は受けないか
15 好景気だけでなく不景気にも強いか、それとも景気の影響は受けないか
投資姿勢
16 お金が余ってると不要な投資をしてしまうが、それは大間違い。何もせず大きなチャンスをじっと待つ
17 極端なポジションを取れば大きく稼げるかもしれないが、長く生き残ることは不可能。適度な集中投資を心がける
18 潜在意識からアイデアが湧いてきても即座に反応してはいけない。しばらく時間を置いて論理的な頭でチェックする必要がある。潜在意識は害にもなるし、役立つこともある。
19 有名投資家の投資行動を分析することは有益である。しかし、その行動を自分が理解できないならば後追いすべきではないし、有名投資家でもミスをすることに留意すべき。
20 マクロ予測(為替、金利、インフレ率など)、相場予測、投資検討先のカウンターパートナーの行動予測は不可能である。しかし、自分が当事者である消費者行動は予測可能であるため投資判断に反映させる。
21 重要でない要因に惑わされて投資判断をするとチャンスを見逃す。投資検討先にとって重要な要因のみに基づいて投資判断をすべき。
22 優良企業にベストタイミングで投資できるのは一時的な業績悪化(今後も続く場合は対象外)、改善可能な不祥事の発生(組織に染み付いた文化的なものは対象外)、金融危機などで株価が暴落した時ぐらい。その際は、その後の株価変動を恐れるのではなく、投資したい金額まで買い集められないことを恐れるべき。勇気(狂気)が必要
23 過去の株価にとらわれてはいけない(アンカリング)。シンプルに現在の株価が適正価格もしくは割安となった時に投資する(手間暇惜しまずDCFによるバリュエーションを実施して事前に価値を把握しておく。とはいえ、正確な価値算定は不可能なのでその算定価値にも囚われ過ぎてはいけない)
24 新たな投資先は既存の投資先以上に魅力的か。良い企業はたくさんあるが、投資すべき企業はほとんど無い。投資検討の大半は候補先を落としていく作業
25 買わない理由を考えたか。自分の仮説が正しいか検証したか。ネガティブ情報を積極的に探して検討したか(反証)
26 優れた投資アプローチであってもすぐに結果が現れないことがある。その際に頻繁にアプローチを変えるのは間違い。反対に上手くいった際に惚れこみ過ぎることも間違い
27 リスクの高い株式投資では数倍・数十倍のリターンを目指すべきであり、数パーセント・数十パーセントの損益はもはや誤差である。多少の含み益で売却すべきではないし、多少の含み損があっても気に病む必要はない
28 常に金融危機を想定して備えを十分にしておき、複数のシナリオを準備しておく。全てのシナリオが同じ結論となるならば、自分のアイデアを信じて投資するべき
29 知りようもない未来に結果を左右される投資活動に失敗はつきものである。失敗を振り返って自分の教訓とする
30 投資で最も大事なことは、投資原則を必ず遵守することである
2024年6月23日 最終更新