日本M&AセンターHD【2127】

当社は、日本の中小企業M&A業界の先駆けであり、業界トップの企業です。

個人的にも馴染みのある会社でよく存じ上げていますが、最近の株価は600円台後半(2023/10/30時点)とかなり売り込まれています。

2023/10/30時点 日本M&Aセンター 株価チャート(Google Financeより)


競合(?)であるM&A総合研究所【9552】と比べたら、当社の割安さがより際立ちます(M&A総合研究所の割高さがより際立ちます)。

そんな中、ベイリー・ギフォードという長期投資ファンドが株価1,000円ぐらいの時に8%ほど一気に買い進めています。「落ちてくるナイフを掴むな」という投資格言を無視するスタイル、嫌いじゃないです。

当社の特徴は、一言でいえば「標準化」につきると思います。

分業制によるM&Aプロセスの標準化、確立された社内教育システムによるアドバイザーの質の標準化、これらを通じて案件成約の回転率を高める。

複雑な大企業のM&Aではなく、シンプルで数の多い中小企業のM&Aを手掛けるからこそ採用できるビジネスモデルです。

当社の社員の方や独立した元社員の方などは信頼のおける優秀な方ばかりで、教育体制が(も)きっと素晴らしいのだろうなと思います(たまにとんでもないアドバイザーだったという話が流れてくることがありますが、アドバイザーの人数が多いためそのような人も一定数いるだろうなと思います。どの組織でも)

通常のコンサル会社であれば、より高度なサービス、より大きな案件、より優れたアドバイザー、といったプロフェショナルモデルを志向する場合が多いですが、当社はそれとは反対の標準化モデル。

プロフェショナルモデルであれば、スタープレイヤーが退職したら業績がガタっと崩れたという話を聞く事がありますが、当社は属人性を排除したモデルであり、一部のスタープレイヤーが稼ぐ体制ではなく標準的なプレイヤーが稼ぐ体制であるためそのような悩みはないかと思います。

2022年当初の会計不祥事をきっかけに株価は下降線を辿っていますが、決算説明資料においては赤裸々に不祥事に起因したネガティブ情報を公表しており透明性が高いです。

当社の競合といえば、M&Aキャピタルパートナーズ【6080】(以下、MACP)です。

年収ランキングによく登場する企業であり、キーエンスを抑えて平均年収3千万なり。

「年収高い=良い会社」とそこまで単純ではなく、日本M&Aセンターは提携ネットワークを活用してM&Aを進めているため紹介料を提携先に支払いますが、MACPは直接営業を掲げているため紹介料の支払いがなく、付加価値が高くなり、結果、社員の年収が高いのではと思っています。

それじゃ、提携ネットワークからではなく直接営業すればいいのでは?と思いますが、中小企業の社長に「会社を売りませんか」という何通ものDMや電話がある中で、直接営業で案件を取るのは骨が折れる事であり、持続性があるのかと疑問に思います。

当社の革新的な業務プロセスと社内教育体制、加えて豊富な提携ネットワークといった競争優位の模倣は困難です。

また、参入障壁が低い業界ではありますが、新興企業が脅威となるかどうかは別問題です(M&A登録事業者数は直近では減少しており、新興企業の事業立ち上げの難しさを表しています)

当社のビジネスは、人口減少が進む日本国内がメインのビジネスですが、マーケットポテンシャル20兆円からすると、まだまだ開拓できる余地は大きいと思います。当社の2023年3月期の売上高は約400億円です。

当社の課題は、資本効率が年々悪化していることでしょう。余剰現金が積み上がり、ROEが年々低下している。

株価下落時に機動的に70億円の自社株買いをしていますが、設備投資が必要なビジネスでもなく、現金預金が約450億円もあるのだからもっと還元してもいいと思います。

参考書籍【日本型ブリッツスケールメソッド 日本M&Aセンターの経営成長戦略】