ROICを理解するストーリー

① ROICの重要性

 焼き鳥チェーンを営む南株式会社より次のような問い合わせがあった。

「自分の会社をどうやって評価すべきでしょうか?ライバルの東株式会社は現時点では規模も利益も同じですが、将来の予想は南株式会社を上回るものとなっており、私のマネジメントが間違っていないか不安です」

 南株式会社は、現在、資産10億で負債無し、税引後営業利益で1億円、ROICは10%、年間5%の成長を予測している。

 一方で東株式会社は、南株式会社と同様に資産10億で負債無し、税引後営業利益で1億円、ROICは10%であるが、年間8%の成長を予測している。

 東株式会社はどうやって年間8%の成長を実現しようとしているか尋ねた。

「東株式会社は低価格の焼き鳥チェーンであり積極的に出店をしています。反対に私たちは中価格帯の焼き鳥チェーンであり積極的な出店は計画していません」

 そこで、それぞれの将来のROICとキャッシュフローを算定したところ、案の定、東株式会社の営業利益は伸びていたが、積極的な出店により投資がかさみROICとキャッシュフローは減少傾向であった。

 この2つのグラフから、売上高・営業利益・成長率と平行して、ROICやキャッシュフローも重要であることを南社長は理解し、自身のマネジメントは間違っていないと自信を深めた。

② 長期的なROICの追究

 後日、南社長が真剣な表情で訪れた。

「新しいコンセプトの焼き鳥屋を思い付きました。このコンセプトがハマれば売上高も営業利益も増加する想定です。しかし、前回学んだROICとキャッシュフローは短期では減少し、その後は増加する想定でして、このアイデアを実行していいのかどうか分かりません」

 南社長は、前回の学びから売上高と営業利益だけで判断するのではなく、ROICとキャッシュフローについても合わせて検討したが、ROICとキャッシュフローが短期では減少するため、新規投資を実行すべきかどうか判断に迷っていた。

 そこで、より洗練された評価手法であるDCF法を用いた評価が必要であると説明し、将来キャッシュフローを資本コストで現在価値に割り引いたところ、新コンセプトによる株式価値は6億円、これまで通りの事業運営だと5億円という評価になり、新コンセプトを実行した方が株式価値が上がることが判明した。

 短期的なROICを追求するのではなく、長期的なROICを追求する重要性を南社長は理解し、自信を持って新コンセプトを始める決意をした。

③ ROICより大事なこと

 後日、南社長がふらっと訪れた。

「店舗ごとにROICがまちまちなのですが、ROICが低い店舗は閉鎖した方が全体のROICは上がると思うのですが、どうでしょうか?」

 ROICは重要な指標である。しかし、事業運営の目的は株式価値の最大化であり、ROICの向上ではない。ROICそのものよりも、その先にある経済的付加価値(エコノミック・プロフィット)の創出が株式価値に繋がる。

 そこで、通常ケースと閉鎖ケースについて比較検討した。

 エコノミック・プロフィットは、通常ケース60百万円、閉鎖ケース50百万円となった。ROICが低い店舗であっても資本コストを上回る利益を上げていることが理由だろう。

 南社長は、ROICの最大化ではなく、エコノミック・プロフィットの最大化を長期的には目指すべきだと理解したが、どこか腑に落ちない様子である。

「会社を評価するには前回学んだDCF法と今回学んだエコノミック・プロフィットをどう使い分けたらいいか分からないです」

 実はDCF法で算定した株式価値とエコノミック・プロフィットで算定した株式価値は同じ結果となる。キャッシュフローをベースに判断するのか、ROICをベースに判断するのかで使い分けるのがベストだろう。

 南社長は店舗を閉鎖することなく既存店の収益性向上に励む決意をした。

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