競合であったメルカリが撤退したり、新たな競合のディップが新規参入したり、と話題に欠かないスポットワーク市場。
現在、株価が大きく下落しているタイミーを調べてみました。
現在のスポットワーク市場
- タイミーの2025年10月末時点での状況は、登録ワーカー数12,747千人に対して、登録クライアント事業所数は417千箇所であり、クライアント数が足りていない。ワーカーではなく如何にクライアントを獲得するかが重要である。クライアントが依頼をかけたら瞬時でワーカーで埋まる場合もあり(友人談)
- 撤退したメルカリハロは、メリカリを提供してるためユーザーの獲得には短期間で成功したが、営業力が弱いため事業者を集めることに苦労した。ちなみに、タイミーの従業員の6割は営業担当である。
- リクルートは、クライアントへの営業が得意であるのにもかかわらず参入前に撤退した。リクルートの発表「リクルートグループにおける人材関連事業全体の戦略を改めて検討していく中で、開発優先順位の観点から『タウンワークスキマ(仮称)』の開発を中止することといたしました。」リクルートもメルカリも、もっと楽に儲かるメイン事業があるので、オペレーションが大変そうな(仕事と応募者のマッチング数の多さ、トラブル対応など)スポットワークに注力する意欲が続かなかったのではないか。そして、大変そうで儲かりそうもない事業をあえてやるという不合理な経営判断がタイミーの参入障壁となる。
- 新たにディップが新規参入。企業規模はタイミーと同程度であるが、顧客基盤が既にあり、他にメインの稼ぎ頭があるため手数料の値下げやワーカーへの還元(グッド評価を貰ったら手数料の10%を還元)を実施。ディップは新規事業のスポットワーク事業を「オセロプロジェクト(タイミーの圧倒的なシェアを根こそぎ奪う)」と名付けており本気度が高い。しかし、タイミーとディップのスポットバイトルのアプリを両方ダウンロードしてみたところ、タイミーでは募集している仕事が大量にあったが、スポットバイトルでは僅か数件であった(調べたエリアは大阪や兵庫)。既に勝負がついているのではないか?
- クライアントが突然キャンセルした場合にワーカーに休業手当が発生するのでは?という問題が発生。タイミーではこの問題に対応するために、労働契約が成立するタイミングを業務当日の現場でQRコードを読み取る時点から、マッチングが成立した時点に運営方針を変更し、就労開始24時間前を過ぎた場合は事業者側のキャンセルを不可とし、休業手当の支払いが必要となる形に変更した。
- スポットワーク市場は、クライアントにとって人件費の究極の変動費化(人手が欲しい時だけ働いてもらう)と迅速な働き手の確保(すぐに来て欲しい)を解決する唯一の市場である。反対にワーカーにとっても働きたい時に、スグに働ける選択肢はスポットワークのみである。正社員、派遣社員、バイトの形態では解決できない。長期で同じ場所で働きたい人も多い、単純作業を切り出せないビジネスも多い、しかしながらスポットワークは労働の選択肢として今後も市民権を得るのではと思う。
タイミーの競争優位
- アプリの使い勝手の良さ、経歴や資格や勤務実績などを反映したクライアントのニーズを満たすひと手間加えたマッチング、これまでの経験で蓄積したどのような単純業務を切り出せばいいか提案できるコンサル営業、これまでのワーカーの蓄積とクライアントの蓄積。まさに地道な積み重ねが必要な一朝一夕には構築できない革新的な事業運営方法が当社の競争優位だろう。これを競合が模倣するのは困難である。
- クライアントとワーカーのスイッチングコストの高さも見逃せない。クライアント側ではタイミー以外のスポットワークサービスを活用した場合、同じワーカーであった場合に法定労働時間の上限などの労働規制に抵触してしまう恐れがある。加えて、同時に二つ以上のサービスで募集をかけた場合にオーバーブッキングが発生する。よって、クライアントはタイミーを使い続ける。ワーカー側では、これまで積み上げた実績や評価、獲得したバッジなどがあるため、別のサービスを使うインセンティブが働かない。よって、ワーカーはタイミーを使い続ける。
- 他社の追随を許さない圧倒的な業界リーダーである。スポットワークといえばタイミーと第一想起される。そのため、クライアントに請求する手数料率である平均テイクレートは約30%と高水準であり価格形成力を有する。
- タイミーではワーカーへの即時支払を提供しており、クライアントからの売上入金までにタイムラグが発生するため、その間にタイミーがお金を立て替える必要がある。業績が拡大すればするほど立替金が増えるため、運転資本としてキャッシュを用意する必要があり資金効率が悪いように思える。タイミーの総資産に占める立替金は3割と巨額である。しかし、タイミーは立替金とほぼ同額の短期借入金があり、銀行借入で資金融通しているため、資金効率は良い。つまり、手持ちのキャッシュはほぼ余剰資金に近く、資金がネックで事業の成長が止まることは無く、増資などで株式が希薄化することもない。銀行借入が大きいことは、設立して日が浅いベンチャー企業では珍しいことであり、タイミーの持つ売掛債権の優良さ(クライアントの優良さ、クライアントの信用度の高さ)が当該借入に繋がっている。
今後のタイミー
- クライアントが増えればワーカーが増えて、ワーカーが増えればクライアントが増えて、まさにストック型のビジネスである。そして業績の拡大に伴い運営コストが逓減して利益は逓増し、まさに市場シェアが最重要である(ウィナー・テイクス・オール)。タイミーの中期経営計画では売上高成長率は20%なのに対して営業利益成長率は30%と売上高を上回っており、業績の拡大に伴い年々営業利益率が上昇していくモデルである。
- 既存領域での新たなサービスの提供、他地域への拡大、他業種への展開(介護など)、隣接事業への新規参入など、スポットワークに加えて既存の派遣、求人広告、人材紹介領域を含めると市場規模は大きい。
- タイミーが想定する潜在的な売上は3.9兆円である。タイミーの売上高は年々成長しており前期は300億弱である。潜在的な売上は大きく、他社の参入が今後も続くだろうが、シェアの大きさと革新的な事業運営方法が競争優位となってタイミーを守ってくれる。
- 登録ワーカー数は12.7百万人、月に一度でもアプリを開いた月間アクティブ・ユーザーは2.5百万人、月に1回以上働いた月間アクティブ・ワーカーは0.3百万人。仕事を探すためにアプリを開いた人の1/3しか希望の仕事を見つけられておらず、アクティブ・ワーカーの拡大余地はあり。
- 中期経営戦略ベースである売上高成長率20%、営業利益成長率30%(販管費率の低下による)という条件で株価算定をし、新株予約権の行使による希薄化13%も考慮すると、現在の株価(2025.12.22時点)は適正株価と思われる。
タイミー小川社長は、社長だと隠してタイミーを使ってスキマバイトをしてるという記事を以前読んだ。日々忙しい毎日を過ごしていると思われるが、現場感を維持する上で欠かせない時間だと思う。
過去最大の株主リターンをたたき出したサウスウェスト航空の経営陣も月に1度は空港で他の従業員と同じように働く文化がある。現場感、大事である。
投資は自己責任です。
