オン・ホールディング【ONON】

私は根っからのナイキ原理主義者であり、ナイキ以外のスニーカーはこの20年購入したことが無いというとんでもないナイキ贔屓である。そんな私がこの数年ナイキで欲しいと思うシューズが無くなってきた。

エアフォースワン、エアジョーダン、ダンクといった往年の名作への飽き、その後の不作、最近の奇抜過ぎるデザイン、あまり良くない履き心地、小売店でもオンラインでも安売りされ続けている愛しのナイキ・・・

そんな中、久しぶりに欲しいと思うスニーカーが現れた。それがオン(On)のシューズである。以前からオンの事は知っていたが、最近はオンのシューズをよく見かけるようになり俄然興味を持った。

西宮ガーデンズでオンの販売状況を確認したが、オンのディスプレイだけ別格の扱いを受けていた。クラウド6の黒は完売、白もサイズによっては完売であった。店員にヒアリングをするとオンを買った人はもうオンのシューズしか履けなくなるので、次もオンを買うとの事。

オンの主たる販売ルートであるオンラインでの販売状況を確認するも種類によっては完売となっている。人気の高さが伺える。

飛ぶ鳥を落とす勢いのオンを調べてみました。

スニーカー市場

  • これまでのスニーカー業界は多額の広告宣伝費が必要であったため、資本力のある企業数社による寡占状態であった。しかし、近年はSNSによる口コミなどにより資本力の無い新興企業(オンやホカなど)が台頭してきている。
  • ナイキはシェア4割、アディダス2割、スケッチャーズ、ニューバランス、アシックスはシェア5%前後、プーマ・ホカ・オンが1~3%となっている。
  • 王者ナイキは業績と利益が共に悪化し、株価は4年に渡って下落し続けている。ナイキのドル箱はジョーダンブランドであるが若い世代はそこまでジョーダンに憧れは無い。ABCマートではジョーダンブランドの廉価版を販売しており目を疑った。ブランド価値を毀損している。ナイキの製品は遊び心があり過ぎて、保守的なデザインを好む層には刺さらない。2024年、業績悪化に伴いCEOが交代となったが、ナイキの遊び心を取り戻すと宣言しており、もうこれ以上遊び心が必要なのか?と思う。
  • アディダスは2023年に30年ぶりに最終損益が赤字に転落。直近では業績が回復しているものの株価は下落傾向である。
  • スケッチャーズは業績好調、株価も上昇傾向。投資ファンドの3Gキャピタルが買収することとなった。デザインはめちゃダサいと個人的には思っている。なぜ売れているのか不思議だ。
  • ニューバランスは非上場であり、4年連続で前年比20%以上の成長を記録し過去最高を更新中である。契約アスリートである大谷翔平効果の寄与度も高いだろう。
  • アシックスは海外での人気が高まり、業績も株価も絶好調である。けん引役はライフスタイル用のオニツカタイガーである。レトロなデザインでお洒落だ。
  • プーマの業績は2025年は赤字に転落する予想であり、株価も4年に渡り下落し続けて投げ売りされている。コストコでも投げ売りされている。
  • 急速に売り上げを拡大中で最も勢いがあるのが新興のホカとオンである。
  • ホカを提供するのはデッカーズ・アウトドア社であり、ホカ以外にもUGGやTevaといったブランドを展開している。業績は好調であるが株価は最高値から半額となっている。需要トレンドの鈍化によりホカとUGGの両方で値引きを実施し、アナリストが格下げしたことが原因と思われる。実際にシューズ売り場に行くと、オンは特定のシューズ以外は値引きが全くされていなかったが、ホカのシューズはあらゆる種類で値引きがされていた。スニーカー企業は流行の影響を大きく受ける可能性が高い。

新興スニーカー企業:オン

  • オン・ホールディングは、2010年創業のスイスに拠点を置く、フットウェアとスポーツアパレルを提供するアスレチックスポーツ企業である。米中の対立が激しくなって米国企業のナイキは中国で不買運動の対象となったが、当社は中国と友好的な関係であるスイス企業であるので政治がらみのリスクは低いだろう。
  • 世界的なトライアスロン選手であったオリビエ・ベルンハルド氏は走る度に足の痛みを感じていた。そこでシューズのソールにゴムホースを付けて走ったところ足の痛みが軽減した。そのシューズをきっかけにマッキンゼー出身のコンサルタント2名と共にオンを創業した。大資本企業がひしめくシューズ業界で起業するなど無謀な挑戦である。当初はランニングのイベントに机を持って行き、3人でシューズを手売りしていたそうだ。まるでナイキの創業期のようである。
  • オンのシューズの履き心地に感銘を受けたスイス出身のテニス界のキングであるロジャーフェデラーがオンに出資をオファー。ロジャーというブランド名でテニスシューズにも参入している。
  • オンの社名は「オンのシューズを履くと自分のスイッチが入る」という想いが込められており、ロゴもスイッチをイメージしている。
  • 競合がマーケティングに力を入れる中、SNSなどデジタルの時代では誰でも簡単に大量のレビューを見れると当社は考え、マーケティングよりも製品開発に重点を置いた。今では通常のマーケティングにも予算を割いているが、イベントの開催やSNSでの交流などストーリーテリングを中心に実施する「コミュニティ・マーケティング」が中心である。そのような流れでオンを購入した人は単なる流行で終わらずに長くオンを愛する。この消費者へのアプローチは競合との大きな違いだろう。
  • 「シューズ界のアップル」「シューズ界のダイソン」と呼ばれることが多いオン。オンのシューズはシンプルなデザインが多いが、それは機能をサポートするためにデザインがあると考えているからである。デザインが優先ではない。しかし、それがシンプルでおしゃれである。アスリートだけでなく私のようにライフスタイル用やビジネスカジュアル用として購入する層も多く、その曖昧な境界線がスポーツをする人・しない人からの支持を得ている。
  • 早速クラウド6のオールブラックをオンラインで購入。到着するのに数週間かかるとのこと。そしたらまさかのスイスから発送されてきた。国内に在庫ないぐらい好調なのか?開封したらスイスの風を感じた。かなり良いです。次はクラウドティルトを買います。

オン・ホールディングの業績

  • オンの売上成長率は2022年は7割、2023年は5割、2024年は3割と高い成長を続けている。
  • 販売エリアとしては、北米中南米が5割、ヨーロッパが3割、残りがアジアである。特にアジアでの成長は著しく前年比では2倍の売上を達成した。
  • 販売チャネルは、自社サイトや直営店の直接販売(約4割)とスポーツショップなどの卸売り(約6割)である。直接販売は卸売りを上回るスピードで成長しており(2~3割の成長率)、利益率も直接販売が高い。卸売りについては、どこでも売っているわけではなく、限られたセレクトショップのみに卸してブランド価値を保っている。量販店やアウトレットモールで見かけることはまずない。直接販売は利益率が高いため競合のナイキも直接販売にシフトしたが(オンと同様の売上比率は約4割)、消費者への露出が減り業績が悪化した(成長率は横ばい)。それが意味する事は、オンとは違ってナイキはマーケティング予算をかけるか、量販店に卸すかして、露出を増やさないと売れないという事である。
  • 多くのブランドが在庫調整のため、セールや値引きを繰り返すなかで(競合は種類も多すぎる)、オンは「プレミアムブランド」として、フルプライス販売を重視する姿勢を崩していない
  • 上記のような背景から、オンの粗利は6割と高く、ナイキ45%やアディダス5割を大きく上回っている。
  • スニーカーは種類に応じてあらゆるサイズを揃える必要があり、在庫が多めになりがちである。在庫過多となると手持ちのキャッシュが不足、流行が早いスニーカー業界であるため棚卸資産の評価損を計上、保管費用の増加、工場の生産を抑える事による製品当たりの粗利の低下、過剰在庫を解消するための安売り、それに伴いブランド価値が低下する。適正な在庫を保つことが重要であり、過剰在庫は悪である。オンの在庫は売上高に占める比率が大きかったが、年々比率は減少している。在庫が多かったのは売れてないというわけではなく、業績の急成長に合わせて品切れを回避するために在庫を余分に保有していたためである。それでも在庫が足りてないと感じるほどの売れ行きである。また、直接販売の比率が高いため、卸売りよりも在庫が多くなる(ちなみに業界で最も効率的に在庫を管理しているのはナイキである)

オンの将来予測

  • 勝ち組と負け組がはっきりと分かれ始めたスニーカー業界であるが、スニーカー業界の長期展望は今後10年で年平均5~7%の成長が見込まれている世界的な成長市場である。
  • 過去にナイキが厚底シューズを世に出したら大ヒット。箱根駅伝ではランナーの9割以上がナイキの厚底シューズとなり、その後は競合他社も一斉に厚底シューズをリリースしたという事があった。同様にオンのシンプルなデザイン、特に穴の開いたソール(クラウドテック)をパクる競合が出てくる可能性がある(既にスケッチャーズが穴の開いたソールをリリース済み)。しかし、オンといえばクラウドテック、クラウドテックといえばオンなのである。スケッチャーズの穴の開いたソールに消費者は心動かされないだろう。ナイキ以外の競合が厚底シューズをリリースしたのは「ナイキ=厚底」という認識にならなかったからだろう。ナイキといえばやはり「Air(エアー)」だ。そして、そのエアーをパクる競合はいない(最近では空気が漏れてきているが)

「挑戦」「反骨心」「勝利」というイメージがあるナイキは今でも好きである。

「優しさ」「笑顔」「繋がり」というイメージがあるオンはもっと好きである。