ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイはオクシデンタル・ペトロリアム【OXY】の約30%の株式を保有しており、平均取得単価は54~56ドルと見積もられている。
石油企業の株価が軒並み好調であるにもかかわらず、債務の大きさが嫌気され現在の株価は45ドルと低迷している。
バフェットの取得単価を下回って株価が推移しているオクシデンタル・ペトロリアムを調べてみました。
事業モデル:産鉱・開発(E&P)主体
- エクソンモービルやシェブロンといった垂直統合型(上流から下流まで)の石油メジャーは原油安局面でも下流の精製部門で利益を補える一方、オクシデンタル・ペトロリアムは上流の産鉱・開発(E&P)主体であるため原油価格の下落が直撃しやすい構造である。
- 当社の生産量は原油と天然ガスが半々である。AI関連のデータセンター建設バブルで電力需要が急増しており、火力発電に必要な天然ガス(天然ガスの用途の8割が火力発電)の需要が急増することが想定される。
巨額債務と「クラウンロック」買収の消化不良
- 2023年のクラウンロック買収により、債務が急増。現在は債務削減を優先しており、株主還元は後回しという状況である。大手石油メジャーに比べて配当利回りが1~2%低い。
- また当社が2019年に同業のアナダルコ・ペトロリアムを買収する際にバークシャーから優先株という形で資金を調達している。
- 当社の営業利益率は石油メジャーの2倍とキャッシュフローの創出力は高く、債務削減と利率の高いバークシャーに対する優先株の償還が進めば「増配」や「自社株買い」に資金が回り始めるだろう。
- 最近(2025年)では当社の化学メーカー子会社オキシケムをバークシャーが買収した。これにより当社の債務負担が緩和された。
脱炭素事業(DAC)への先行投資
- 当社は空気中からCO2を直接回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」に巨額を投じ、シェールオイルを取り出す過程で培った「地下に気体を注入する技術」を転用して、将来はCO2を地下に埋めて稼ぐ予定である。
- 本格的な収益貢献は2026年後半以降と見られており、脱炭素事業の収益化が見えてくれば、「ただの石油株」から「ハイテク脱炭素株」への再評価(マルチプルの上昇)が起こる可能性がある。現在、Microsoftなどのテック企業が当該DAC事業から創出される炭素クレジットの購入を表明している。
- 世界が脱炭素に傾けばDAC(直接空気回収)事業が爆発的に伸び、反対に原油需要が残れば石油事業が儲かる。どちらに転んでも勝てる「ヘッジ」が効いたビジネスモデルである。
「高品質」パーミアン盆地の絶対的覇者
- 当社が持つテキサス州パーミアン盆地の権益は、世界で最も効率よく(安く)原油を採掘できる場所の一つであり、原油価格が$40台まで下がっても利益が出せるほど損益分岐点が低い。米国の総産油量の45%以上を占めるシェールの一等地であり、当社に投資する事はパーミアン盆地の石油・ガス資源を所有することに等しい。過去に石油メジャーやOPECが新興企業であったシェール企業を潰すために石油の供給を増やし続けて原油価格を下落させたが(その時のシェール企業の損益分岐点は原油価格60ドル)、そのような事態が起こっても当社は生き残る(今や石油メジャーがシェール事業を買収しており、そのような事態が起こる可能性は低い)
- 当社は2019年にパーミアン盆地で原油生産をおこなう同業のアナダルコ・ペトロリアムを買収し、同じくパーミアン盆地で原油生産をおこなうクラウンロック社を買収し、パーミアン盆地での生産能力を強化している。
- エクソンモービルといった石油メジャーは新興国での開発採掘を実施しており、まさに命がけであり、巨額の投資が必要であり、国家からの収用のリスクもあるが(近年のベネズエラなど)、当社のパーミアン盆地ではそのような困難さは無い。
化石燃料の将来予測
- 世界的な人口増加と所得増加により石油需要は押し上げられている。特に途上国の成長が石油需要を加速させている。
- 石油需要の35%を占める自動車やトラックの数もこれから増えていく。2023年の1,000人当たりの自動車台数は米国で896台とトップ(人口3億)、中国では200台前半(人口14億)、インドでは僅か30台前後だ(人口14億)。
- 電気自動車は今よりも普及するだろうが、そうなればガソリンの代わりに電気の需要が増える。しかし、最近の自動車メーカーは電気自動車から撤退している。今後、ガソリン車の燃費がより改善すれば、さらに電気自動車の需要が減るだろう。電気自動車(天然ガスで発電)だろうが、ガソリン車(石油からガソリン)だろうが、石油と天然ガスを半々で産出している当社にとってはどちらでも構わない。
- 旅客機の数は今後20年ほどで倍増すると予想されている。世界人口の8割はまだ航空機を一度も利用したことがない。中国では毎年8つの空港が建設されている。旅客機の需要は伸びていくだろう。
- 石油は燃料に使われるだけでなく石油化学製品やプラスチックの原料にもなる。石油化学製品はGDP成長率の2倍の速さで需要が伸びている。現代はプラスチックでできていると言えるほどあらゆる場面でプラスチックが使われている。石油の無い世界は想像ができない。
- 再生可能エネルギーには電力の生産が断続的であるという課題があるのに対し、石油よりも埋蔵量が豊富で炭素の排出量が少ない天然ガスの需要が2050年までに現在より60%高まるという見積りもある。
- 現在のエネルギーは80%以上が石油と天然ガスに支えられている。
- 太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは石油や天然ガスの代替エネルギーというよりは、増え続けるエネルギー需要に対するエネルギー供給の追加という段階である。
この世が終わらない限り石油や天然ガスの需要が将来的に伸びていくことは確実だろう。
